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【福島子ども支援NPO助成】避難者と地域をつなぐ交流スペース「たねまく広場」

ひろしま避難者の会「アスチカ」

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支援期間 2014年1月1日~12月31日
事業地域 広島県全域
助成金額 500万円
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広島県内の避難者数は、2015年10月時点で414人(復興庁調べ)。そのほぼ半数の219人が福島県からの避難者だといわれています(福島県資料による)。放射線による健康被害を心配しての母子避難者も多く、東北だけでなく関東からの自主避難者も少なくありません。
その広島県内で、唯一の避難当事者団体として活動しているのが「ひろしま避難者の会『アスチカ』」(以下、「アスチカ」)です。会員として登録している避難世帯約100世帯、300名以上を主な対象として、情報発信、月一回の交流カフェ、勉強会やイベント開催などを行ってきました。これまで拠点を持たずに活動していましたが、助成を受け2014年6月に待望の事務所兼交流スペース「たねまく広場」を広島市内にオープン。会員だけでなく地域に開かれた場所として運営がスタートしています。
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明日へのステップをサポート
アスチカの代表を務める三浦綾さんは、震災後にいわき市からふたりの子どもと自主避難してきました。最初の頃は、ほかに避難者の知り合いもいなく、広島市社会福祉協議会(以下、「社協」)が開催していた月1回の避難者交流会に参加していたそうです。しかし、その交流会も2011年11月に終了。それをきっかけに、三浦さんを中心とした避難者数人が集まり、避難者主体のネットワークづくりに取り組み始めたのです。
「ちょうど広島県が福島からの自主避難者への住宅支援を始めたばかりの頃。これから避難者が増えるかもしれないのに、避難者のコミュニティがなくなってしまっては困ると思ったのです」と三浦さん。
まずは、社協を通じて避難者へアンケートを配布。避難地域や状況、そして困っていることがあるかなどの情報収集から始めました。その後、登録してくれた会員へ情報発信を行うほか、月一回の「交流カフェ」では、顔を合わせる機会も提供。「アスチカ」は、次のステップへ踏み出す力をサポートしたいという思いから、“明日へすすむ力“という意味で名づけました。
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(交流スペース「たねまく広場」の内観。大テーブルを借りてミニ教室の開催も可能。検索用パソコンやキッズスペースもある。)

会員の声にこたえながら活動
会員には未就学児や小学生の母親も多く、家族と離れての生活、知らない土地での子育てに不安を抱えている人も少なくありません。アスチカでは、電話、メールなどを通じ、さまざまな相談を受けています。内容に応じて行政の窓口や支援団体につなぎ、ときには一緒に部屋探しの手伝いをすることもあります。放射線への健康不安の声を受け「エコー検査体験会」を実施したほか、原発についての勉強会など、会員の要望にこたえる形でイベントや勉強会も開催してきました。
「スタッフだけでなく交流カフェで同じ悩みをもつお母さんたちで情報交換をするなど、会員同士が支え合う場がある。それが当事者団体ならではの強みだと思っています」と三浦さん。交流カフェでは学生ボランティアによる託児も用意して、母親同士がじっくり話せる環境を整えています。
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(「アスチカ」スタッフの皆さん。今回お話をうかがったのは、代表の三浦さん(右から2番目)と会計担当の岩木さん(左端)。)

避難者と地域住民の交流の場
2014年6月に事務所兼交流スペース「たねまく広場」ができてから、「アスチカ」の役割はさらに広がっています。これまでは月1回の交流カフェしか集まる機会がなく、日程が合わずに参加できない会員もいましたが、「たねまく広場」ができてからはふらりと立ち寄る会員も増えました。この広場では、月2回の定期的な法律相談のほか、税務相談会やミニ教室も行っています。
広場を利用できるのは会員だけではありません。テーブルのあるスペースはだれでも利用可能で、地域で活動する団体の集まりやミニ教室としての貸し出しも行っています。避難者や地域の作家の手づくり雑貨の物販コーナーもあり、近所の人が気軽に遊びに来られる場所になっているのです。
「会員に限定しないのは、地域の人との交流の場にしたいという想いもあるからです」と話すのは、会計担当の岩木正裕さん。岩木さんは、広島市民のボランティアとしてアスチカの活動をずっと応援してきました。避難が長期化し、定住を決める人もいる一方で、避難者の状況は地域であまり知られておらず、アンケートでは避難先にうまくなじめない不安を訴える会員もいます。広場で会員が地域の人といっしょに参加できるミニ教室やイベントなどを行うことで、交流のきっかけをつくりたいと考えているのです。
また、スペースの奥には、被災地に関わる資料を提供するコーナーも設置。会員にとってはふるさとの情報が手に入る場所であり、地域の人が避難者や被災地の状況を知る機会にもなっています。
「先の見えない避難生活に不安を感じている人は多い。ふらりと立ち寄って気分転換したり、スタッフに相談したり、同じ避難者や地域の人と出会ったり…。そんな風に、『たねまく広場」が会員にとっての心の拠りどころになればいいと思っています。そして、会員だけでなく、地域の人にとっても得るものがある場所になっていってくれればうれしいですね」(三浦さん)。
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(「たねまく広場」では、これまでにちぎり絵やピザづくりのミニ教室が行われた。会員も近所の人もいっしょに参加して楽しく過ごす。)

【団体概要】--------------------------------------------------------
 設立年 2012年10月 
代表 三浦 綾 
運営スタッフ数 6人
事業内容(本事業以外):
・近隣県避難者団体との連携(中国5県ネットワーク)
・県内市町イベント・企業イベントなどへの参加(講演等)
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■助成団体の活動意義
同団体は、東日本大震災をきっかけとして広島県内に避難してきた方々が、生活の基盤や気持ちを整えたり、同じ思いの仲間を見つけたりしながら、避難生活を落ち着かせ、次のステップへ踏み出す力を蓄えるためのサポートを目的とし、子育て中の避難当事者により設立されました。広島県内で生活する避難者と支援者、地域住民のための情報発信・交流拠点を設け、家族と離れての生活、知らない土地での子育てに不安を抱えている保護者たちが気軽に集える情報交換の場をつくるなど、当事者団体ならではの強みを生かした活動を続けています。

■助成の使途
助成により、広島市内に活動拠点「たねまく広場」が確保され、避難者からの相談対応、勉強会やイベントを拡充して開催することができました。また、拠点に必要な通信インフラをはじめ、什器備品の調達や整備、会員向けニュースレターの発行や避難者交流カフェ開催案内の作成費等にも助成が活用されました。

■助成前・後での変化
助成を活用して活動拠点とスタッフを確保できたことにより、避難者同士のつながりや、避難者と地域住民・ボランティアの関わりを増やし、広島県内における避難者支援活動を大きく進めることができました。拠点を中心に支援活動を拡げることができた結果、風化が心配される「東日本大震災への関心」や「県外避難者支援の必要性」を広島県内で再認識してもらうことにもつながっています。また、相談対応の拡充により保護者の不安を和らげることで、子どもの心身の安定にも寄与しています。