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【福島子ども支援NPO助成】避難生活を送る子どもに遊びを届け、仲間づくりと心のケアに尽力

認定特定非営利活動法人 しゃり

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支援期間 2013年1月1日~12月31日
事業地域 埼玉県加須市
助成金額 125万円
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千葉県市川市を拠点に10年以上、地域の子ども会や障がい児の親の会に“遊びの出前”活動を行ってきた「しゃり」。ユニークな団体名には「お寿司のしゃりのように様々なネタ(遊び)をのせて社会貢献したい」という思いが込められています。
震災直後から東北の避難所を回り「遊びを通じた子どもの心のケア」に努め、2011年7月以降は、原発事故で福島県双葉町から埼玉県加須市の旧騎西高校※に集団避難した親子の支援に傾注。過酷な体験をした子どもが元気を取り戻し、元から住む地域の子どもとも仲良くなれるようにと、スポーツや屋内ゲームを楽しむ「あそびひろば」を月1回程度開催。同時に大人のための集いの場「ふれあい喫茶」を併設し、親同士の交流や長引く避難生活のストレス解消にも尽力しています。
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遊びを通して子どもの健やかな育ちをサポート

「あそびひろば」の開催日。ボールや工作道具など、たくさんの遊び道具を車に積んでやって来るスタッフを子どもたちは待ち構えています。「今日はフットサルをやろうよ」「この間の続きのビーズ遊びがしたい」など、スタッフに駆け寄りさっそく遊び始める子どもたち。副理事長の武藤美江さんいわく「フットサルなどチームで楽しむスポーツは、知らない子ども同士も仲良くなれるので人数がそろうとよくやります。でも決して強制はしません。いくつものネタを用意して子どもがしたい遊びが出来るよう手助けすること、そして楽しく遊ぶ中で年齢・出身地・障がいの有る無しといった互いの違いを認め合い、バリアフリーな関係性や助け合いの心を育むのが私たちの役割」。
元から加須市に住んでいた子どもも含め、参加者は多い時で30人ほど。安心して遊べる場所と仲間を得たことで、何度となく引っ越しを重ね、心を閉ざしがちだった双葉町の子どもにも笑顔が戻りました。

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知らない子ども同士も仲良くなりやすいボールゲームはいつもメニューに組み込んでいる。写真は旧騎西高校の体育館での一コマ。

 

スタッフに臨床心理士や保育士を擁する強み

「しゃりが加須市での活動をスタートした当時、旧騎西高校では1,200人以上が避難生活を送っていました。しかし各地の仮設住宅への移転が進み、2013年6月には町役場の機能も福島県いわき市に移転。そのため2013年12月には、加須市内に暮らす双葉町の人は約500人にまで減少しました」(武藤さん)。一方、双葉町のほとんどの地区は帰還困難地域に指定されており、一時帰宅もままなりません。このように不安定な状況に置かれた子どもにとって、2年半以上寄り添っているしゃりのメンバーは心強い存在。親にも言えない悩みをそっと子どもが打ち明けることもしばしばです。また、スタッフに臨床心理士、作業療法士など心のケアの専門家がいるのも強み。スタッフ全員が内部研修を受けた上で子どもと接しています。
「様々な状況の子どもがおり、中には親を亡くした現実を受け入れられていない子どももいます。私たちとしては立ち入った質問をしたり子どもの言葉を否定したりせず、時には聞き流し、時にはじっくりと子どもの話に耳を傾ける。そして遊んだ後はスタッフ全員でミーティングをし、子ども一人ひとりの様子を共有しています」(理事の中村沙織さん)。
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「あそびひろば」参加者に渡すメッセージカード。遊びの内容や子どもの様子を保護者に伝え、子どもへの励ましの言葉も添える

 

大人同士の交流の場「ふれあい喫茶」

「あそびひろば」開催時は、子どもの家族や地域の人が気軽に集える「ふれあい喫茶」をオープン。避難者同士が思いを共有し、新しい人間関係づくりができる場として年間のべ200名以上に愛用されています。
「あそびひろば」「ふれあい喫茶」とも2013年10月までは旧騎西高校の体育館で開催していましたが、役場機能の移転にともない体育館が閉鎖されたため、同年11月以降は公民館などを借りての開催に。スペースの確保や準備は手間のかかる仕事ですが、「加須市への移住を決めたけれど孤独を感じている親子、落ち着き先が見つからずやむなく留まっている高齢者など、今利用してくれている方の多くはしんどい事情を抱えています。利用者数が減っている今だからこそ、活動を続ける意味がある」と武藤さん。同じく旧騎西高校で支援活動をしていた他団体と連携を取りながら今後の活動の仕方を模索しています。
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「ふれあい喫茶」ではスタッフが温かいコーヒー・紅茶、スナックなどを用意。くつろいだ雰囲気で大人たちに交流を深めてもらう。

 

10年先まで長くゆるくつながっていきたい

活動を始めた当初は、交通費や遊びに使う消耗品費が大きな負担となっていました。「子どもたちが待っていてくれるから行くのは当然という感覚でした。でも助成を受けたことで、無理なく支援を継続できた」と武藤さん。
元々、しゃりの母体は主要メンバーのお母さんたちが30年以上前に立ち上げた子育てサークル。多年代の子どもがともに遊び成長する中で、親以外の大人への信頼感や共感力が育まれたといいます。「“あそびひろば”に来てくれる子どもが長くつながり続け、自分たちも交流活動を運営する側に回りたいと思ってくれたら嬉しいですね。私たちもできれば5年10年先までゆるくつながっていきたい」。なにより双葉町の子どもたちが困難を乗り越え健やかに成長することが、しゃりの一番の願いであり目標です。

※2011年4月より福島県双葉町住民の避難所となる。2013年12月末に最後の住民が退去。東日本大震災の避難所としては最も長く避難者の生活の場となった。

(2013年12月インタビュー実施)

 

【団体概要】--------------------------------------------------------
設立年:1999年12月  代表者名:大久保 誠
スタッフ数:28名(そのうち常勤5名)
事業内容(助成事業以外):
・保育園・学童保育所の運営
・障がいの有無にかかわらず参加できるサマーキャンプの主催
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■助成団体の活動意義
同団体は、地域の子ども会や障がい児の親の会に「遊びの出前」活動を10年以上にわたって行ってきました。障がいの有無に関わらず、遊びや居場所を提供し、臨床心理士など専門的な人材が子どもを見守ることで子どもの成長をサポートしてきました。その経験を生かし、震災後は、福島県双葉町から埼玉県加須市の旧騎西高校に集団避難した親子を対象に、専門家による心のケア、PTSDへの対応などを含む 「遊びの出前」活動を実施。支援の必要性が高い対象であり、経験と専門性に裏打ちされた活動と評価され、助成が決まりました。

■助成の使途
助成を受けたことで、旧騎西高校体育館や公民館で、体を動かす遊びや工作、集団でのゲームなどを行う「あそびひろば」を月1回、継続的に開催できました。「あそびひろば」と同時に大人向けの「ふれあい喫茶」を開催し、親同士の交流や長引く避難生活の息抜きの場として、毎回20人程度、年間通して250人程度が参加しました。助成金は、主に運営にあたるスタッフの人件費と交通費に充てられました。

■助成前・後での変化
「あそびひろば」が開催されることで、日頃から我慢をしている子どもが自由に遊ぶ場所と時間が担保され、ストレス発散や「自分もやればできる」という自信の向上につながりました。同時開催の「ふれあい喫茶」では、保護者が郷里の友人と久々に話す機会を得られたり、生活や子育ての不安をはきだしたりと、思い思いに語る場として機能し、ストレスの緩和などのメンタルヘルス向上にも寄与しました。助成事業の実施を通じて、避難してきた子どもが地元の新しい友達を連れて遊びに来ることもあり、「遊び」を通してのコミュニケーションは、地域(双葉町や加須市)や年代を超え、縦や横の絆を強くしたように感じられました。