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【福島子ども支援NPO助成】豊かな感性を育みながら、地域の子どもをみんなで見守りたい

こどものにわ

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支援期間 2014年1月1日~12月31日
事業地域 福島県二本松市
助成金額 406万円
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 福島県二本松市に、小学校帰りの子どもたちが「こんにちは!」と元気よく通ってくる場所があります。それが「こどものにわ」が運営するスペース「ふくしまグリーンキャンバス」です。
 東日本大震災後、二本松市内では福島第一原発事故の影響によって、子どもの外遊びを控える家庭が多くありました。「こどものにわ」代表の櫛田拓哉さんは、二本松市の出身。東京で子どもの造形美術教育活動を行っています。子どもたちが外で遊べない代わりに、自由な創作活動を通じて豊かな感性を育んでほしいと、2011年11月から二本松市で公民館を借り、月1回の「造形あそびワークショップ」を始めました。
 北海道から沖縄まで、全国から届いた土を使って「泥だんご」をこねたり、数千個の紙コップを重ねて塔を作ったり、ルールのない自由な物づくりに、毎回子どもは目を輝かせ、夢中になって取り組みます。
 ワークショップを続けるうちに、櫛田さんは、日々さまざまなことを吸収して成長する子どもには、月1回だけでなく日常的にこうした活動に触れられる場が大切なのではないかと考えるようになりました。そこで、2013年9月に活動の拠点となる「ふくしまグリーンキャンバス」をオープン。学校帰りに通える「放課後ひろば」をスタートさせたのです。
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不便さが、「育む力」になる
 実は、東京ではすでに15年以上にわたって「放課後ひろば」のような活動を行なってきた櫛田さん。
 「造形あそびでは、形を完成させることより、たとえ線や色がはみでたって気にせずに、好奇心をもって楽しみながら作る『過程』のほうが大事なんです。そうした経験が、感性や生きるたくましさみたいなものを育みます。震災後、何かできることがないかと考えたとき、地元の子どもたちに自分のこれまでの経験が生かせるのではないかと思いました」と話します。
 震災から約4年が経ち、市内では園庭や遊び場の除染作業が進んでいます。しかし、まだ不安が完全に解消されたとはいえない状況です。
 「東京でも同じですが、今は遊び場が少ないこともあって、子どもたちは携帯ゲーム機のような刺激の強いものに夢中になりがちです。この『放課後ひろば』には、出来上がったおもちゃや遊び道具はないし、足りないものは自分で作らないといけない。正直いって不便。でも、だからこそ楽しさも大きくなる。
 幼少期からこうした遊びに触れることで、失敗をためらわずに挑戦すること、楽しみを見つけていく力が養われていきます。それに、グループでやることが多いので、コミュニケーション力もつく。それは、遊び以外の場でも生かされていくはず」と櫛田さん。
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(「造形あそびワークショップ」の様子。土などで福島県の形を「型抜き」することで、地域のことを再認識するきっかけにも。)

子どもの「やりたい気持ち」を尊重
 「放課後ひろば」には、現在、小学1年生から5年生まで1日に約14人の子どもたちが通います。幼稚園や小学校の教員免許を持つ地元スタッフの沼邉優子さんと下条真美さんが中心となって運営しています。
 小学校が終わると、子どもたちは真っすぐに「放課後ひろば」に向かい、まずは宿題を終わらせます。宿題の後は、おやつと自由創作など遊びの時間。大まかなスケジュールはあるものの、実際に何をするかは子ども次第。子どもの「やりたい気持ち」を尊重して、自主性に任せているのです。毛糸で飾りを作るなどの創作活動だけでなく、料理やカルタをすることも。
 「物づくりだけにこだわらず、子どものやりたいことを大切にしています。学校だと同学年としか遊ぶ機会がありませんが、年齢の違う子ども同士、縦のつながりも生まれているんですよ」と沼邉さん。下条さんも「学校とも家とも違う、子どもの『居場所』になっていて、他では話せない相談をしてくれることもあります。通っているうちに自主的に宿題をするようになるなど、子どもの変化も感じています」と話します。
 今後は、子どもがもっと運営に参加できるように「子どもミーティング」を開いて、自分たちがやりたいことをどう実現していくのか、一緒に考えていく場をつくっていきたいと考えています。
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(週3回の「放課後ひろば」では、宿題に取りかかる子ども、創作活動に専念する子どもなど、それぞれの自主性を尊重している。)

「点」の活動を、地域で「線」に結びたい
 櫛田さんは、今でも「ふくしまグリーンキャンバス」で月1~2回ほど「造形あそびワークショップ」を開催している他、ここでの活動や経験を生かしてほしいと、二本松市内の幼稚園や保育園への訪問授業を行ない、保育士を対象とした講座の開催なども積極的に行っています。
 「子どもにどう声がけをするのか、興味をどう引き出すのか、子どもの目線で感じてもらうことをしています。実際に授業や講座の内容を生かして保育に取り入れたり、発展させている先生もいるんですよ」と櫛田さん。
 これからは、助成を活用して「放課後ひろば」のスタッフや開催頻度を増やしていくほか、「ふくしまグリーンキャンバス」を未就学児の親子が通える場所にもしたいと、施設の改修を計画中です。
 「活動を継続していくことはもちろんですが、僕たちだけで出来ることは限られています。『この場所だけ』とか、『僕たちと子どもだけ』という『点』の活動ではなくて、保育所から小学校、保護者まで、いろいろな『線』を結んで、地域のみんなで子どもたちを見守っていく、そんなモデルをつくっていきたいですね」。
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(市内の保育園などを訪問して保育士への指導も行ない、子どもの目線になって、実際にワークショップも体験してもらう。

【団体概要】--------------------------------------------------------
設立年: 2000年4月 
代表者名:櫛田 拓哉
スタッフ数:4人、ボランティア4人
事業内容(本助成事業以外):
・東京都中野区の拠点でアートワークショップを主宰。
・幼稚園や発達支援教室等で造形プログラムを実施。
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■助成団体の活動意義
同団体は、震災後、福島県二本松市において、放課後ひろば「ふくしまグリーンキャンバス」を開設・運営しています。
原発事故の影響により、子どもたちが外で遊ぶ機会が少なくなっている代わりに、自由な創作活動を通じて豊かな感性を育んでほしいと、「造形あそびワークショップ」などを通じた放課後の居場所づくりに取り組んでいます。

■助成の使途
「ふくしまグリーンキャンバス」の運営費やスタッフの人件費・研修費などに助成が活用され、週3~4回の放課後ひろばや、月1~2回の造形ワークショップを定期開催することができました。また、「ふくしまグリーンキャンバス」の案内リーフレットやチラシの印刷費にも、助成が活用されています。

■助成前・後での変化
助成を受け、「ふくしまグリーンキャンバス」の安定・継続的な運営が可能となり、開催頻度の増加により、地域における活動の定着にもつながりました。また、震災後、外遊びや交流の場が制限されるなど様々な困難を抱える子どもたちにとって、五感を発揮し自由な造形活動ができる場所として、大きく寄与しているといえます。