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【福島子ども支援NPO助成】親子も支援者も、ともに楽しく成長し合える広場

すくのびくらぶ

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支援期間 2015年1月1日~12月31日
事業地域 福島県いわき市
助成金額 493万円
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東日本大震災によって被害を受けた一方、周辺地域から多くの避難者も受け入れてきた福島県いわき市。震災後は、子どもが外遊びができず室内にこもりがちで、母親たちから「子どもがのびのび遊べる場所がほしい」との要望が上がっていました。そこで、駅から近いショッピング施設内に2012年2月にオープンしたのが、屋内遊び場「とことん広場」です。
 当初、「とことん広場」は「(特活)いわきNPO センター」が運営をしていました。この団体は元来市内のNPOやボランティア団体などを支援する組織であったため、とことん広場を引き継いでくれる団体を探していました。その声に応え、2015年1月から運営を担っているのが「すくのびくらぶ」代表の前澤由美さんです。

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広場の雰囲気が変わってきた
別の子育て支援団体にも所属している前澤さんは、看護師や心理カウンセラーなどの資格をもち、2年前から子育て相談員として月1回広場に通っていました。
「震災後は、笑顔のないお母さんが多かったんです。他から避難してきた方もいましたし、原発事故の不安もあり、何重もの負担がかかっていました」と前澤さん。「この場所があるから気持ちを保てているんです」という母親たちの声を聞き、広場の必要性を感じたと言います。そこで支援者を育成するべく新団体「すくのびくらぶ」を立ち上げ、広場の継続を決意しました。
運営を引き継いで最初に取り組んだのは、広場スタッフの子育てに必要な知識の習得でした。現在、主婦から学生まで12人のスタッフがいます。子育て支援の経験にかかわらず、月1回のスタッフ勉強会をしています。その他に広く地域から参加者を募集し、保育士の国家資格をめざす勉強会を毎月開催しています。子どもの発育発達、保育や教育、病気や障がい、子どもの心理や栄養、人権擁護などをチームで学んでいます。専門的なスキルを習得した方は、広場の支援者になってほしいと考えています。
この1年間の勉強会でスタッフは自信を持つことができて、積極的に子どもとかかわるようになりました。いまでは広場に来た子どもを「いらっしゃーい、いっぱい遊ぼう!」と元気よく迎え、母親には「帰ったら、お昼寝してくれそうですね」など、育児サポートを意識した声かけをそれぞれが行っています。
「子どもがスタッフと楽しそうに遊んでいるのを見ると、暗い顔をしていたお母さんも変わってきます。以前は壁に寄りかかって携帯電話を見ていた親御さんも、子どもと一緒に広場で遊ぶようになり、広場の雰囲気が変わってきました」と前澤さん。

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(月一回だけ広場をお休みにして、スタッフ勉強会を開催。スタッフが専門知識を身につけることで、サポート体制・支援の質の向上を目指す。)

子どもの自主性と成長を大事に
市内にはほかにも屋内遊び場がありますが、この広場のようにのびのびと走り回って過ごせるところは多くありません。小さな子どもが大きな遊具に上ってしまうこともありますが、前澤さんは「危ないから」と禁止するのではなく、「どうやって安全に降りられるのかを教えることのほうが大事」と考えます。
たとえば、子どもたちがケンカをしたら、もちろん怪我には気をつけますが、すぐに止めたりはしません。子どもたち自身で仲直りの仕方、やり取りを学ぶことも大事だからです。こうした広場の方針を、お母さんたちも今では理解してくれています。
また、子どもの自主性を尊重することも心がけています。使うおもちゃは、親ではなく子ども自身に選んでもらい、片付けをしたら大きな声でほめるようにしています。「子どもたちが日々成長していくのが感じられ、そんな子どもたちにスタッフも癒されています」とのことです。

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(小さな子どもが走り回れるほどの広いスペースには、大きな遊具も設置。順番を守ることなど、遊びながらルールを学んでいく。)

いつでもあたたかく迎える場所
「とことん広場」では、手遊び歌、折り紙、高校生による絵本の読み聞かせ、親子ヨガなどのイベントを毎月開催しています。母親・父親同士の交流会、育児相談会も継続しています。イベントは、母親にとっても息抜きの時間だと喜ばれ、利用者は毎回増えています。
「育児相談では『子どもが言うことを聞かない』などの話も多いのですが、よく聴いてみると、お母さん自身が疲れていて助けを必要としている場合が多いです。相談してお母さんがほっとした表情になると、それを見た子どももリラックスする。私自身、同じようなことで悩んだり失敗した経験があるから、共感することが多いんですよ」。そう笑顔で話す前澤さんは、母親にとっても気軽に相談できる存在ですが、実は、運営を引き継いだ当初は「やっていけるだろうか」というプレッシャーを感じていたといいます。「最初はすごく不安だったんです。でも、子どもたちの笑顔を見ているうちに、ここに来ることが楽しくなっていきました。相談中であっても、子どもたちが『遊ぼう!』と集まってきます。ちょっとした声がけや工夫で、お母さんも子どももスタッフも変わっていく。私自身もです。だから、みんなで助け合って、お互いに成長できる場所にしていけたらいいな、と思っています。」
今後は、母親や地域の人たちがそれぞれの得技を生かして、教え合うような機会もつくりたいと考えているそうです。いつでも利用者をあたたかく迎えられる広場でありたいと話してくれました。

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(育児や健康などに関する相談会も定期的に実施。一人で抱えていることを誰かに話すだけでも、ほっとした表情に。)

【団体概要】--------------------------------------------------------
設立年:2014年
代表者名:前澤 由美  スタッフ数:12人
事業内容(本助成事業以外)
・いわき市内16団体の子育て支援ネットワーク(こども♡あいネット)に加入。各団体の広報・周知・情報提供などに協力し、地域活性化へ貢献。
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■助成団体の活動意義
 保育士、看護師、社会福祉士など子どもや子育てについての専門性があり、市内の他の屋内遊び場の運営にも携わった経験を持つ人材を中心に構成されています。震災や原発事故による避難者の増加など環境変化が著しいいわき市内において、外遊びや子育てに不安を抱える親子の居場所「とことん広場」を継続させようという取り組みが評価されています。

■助成金の使途
 「とことん広場」を運営するスタッフの人件費のほか、広場内のおもちゃや衛生用品の購入など、広場の運営費に助成金が充てられています。また、広場のスタッフがより専門性を高めるための研修費用や、保育士の資格取得を目指す勉強会の開催費用にも助成金が活用されています。

■助成前・後での変化
 助成を受けて、スタッフの勉強会やチームワーク向上のための研修会を行ったことで、親子と直接接するスタッフにも自信がつき、利用者親子への関わりが増え、質も向上したとの反響が寄せられています。来場者は2014年から倍増し、2015年7月には1日100組以上の親子が広場を利用しました。