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【福島子ども支援NPO助成】福島と米沢の親子が野外で思いきり遊び、交流できる場づくり

特定非営利活動法人 青空保育たけの子

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支援期間 2015年1月1日~12月31日
事業地域 山形県米沢市
助成金額 417万円
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「福島第一原発事故の影響で外遊びを制限された福島の子どもに、野外で思いきり遊べる機会を。そして県内外の子どもが自然と触れ合い、遊びを通して創造力や豊かな感性をはぐくめるように」と、福島市から車で約1時間15分の山形県米沢市で「冒険遊び場あそべんちゃーランド(以下、「冒険遊び場」)」を開催しているのが「(特活)青空保育たけの子」です。
代表の辺見妙子さんは東日本大震災発生前は、福島市内で無認可保育園を運営していましたが、2011年10月に活動拠点を米沢に移し、平日は福島の子どもをバスで送迎するサテライト保育を実施。そして毎週末、園庭と保育施設で「冒険遊び場」を開催し、多年代の子どもと家族の遊びと交流をサポートしています。
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米沢市郊外の広大な敷地を遊び場に
「自然の中で幼児期に大切な五感を磨き、生きる力をはぐくむ保育がしたい」と、2009年に団体を立ち上げ、野外活動を主とした保育を実践してきた辺見さん。原発事故後、遊び場として使っていた公園や野山での活動が難しくなったため、福島からの避難世帯も多い米沢市内で保育所を再開し、念願だった「冒険遊び場」を2014年からスタートしました。
当初は他団体の土地・建物を借りて活動していましたが、2015年4月に現在の活動場所である米沢市上新田に移転。雑木林や古民家を擁する約700平米の広大な敷地に手づくりの遊具・泥んこ遊び場・たき火遊び場・ピザ窯などを配し、元々あった土蔵は木工遊び用のスペースに、雑木林は木登りや虫捕りが楽しめるよう整備しました。毎週金・土・日曜日に開催する「冒険遊び場」には福島県内および米沢市周辺から月のべ100人以上の親子が訪れ、子どもたちはプレーリーダーに見守られながら思い思いの遊びに興じます。
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(米沢市郊外の田園地帯にある活動拠点にて、代表理事の辺見妙子さんとプレーリーダーの菅原健児さん。看板は菅原さんの手作り。)

子ども自身がルールを考え、遊びを創造する
プレーリーダーの菅原健児さんによると、「初めて訪れた子どもは遊び方が分からず、戸惑うケースがほとんど。でもだんだん積極的になり、『秘密基地』をつくったり、自分たちでルールを考えてボール遊びをしたり、子ども自身が遊びを創造していきます」。 
子どもたちに一番人気の遊びは「春から秋口にかけては虫捕り、冬は雪遊び」で、虫捕りを目当てに福島から頻繁に訪れる親子も。そして園庭に1.5メートル以上雪が積もる冬場、スタッフは雪かきに追われますが、子どもたちはそり遊びやかまくらづくりに熱中。初めは遠慮がちにそり遊びをしていた子どもも慣れるにつれ大胆になり、急斜面を滑降したりすべり台をジャンプ台に見立てて「ジャンプ大会」を始めたり。
「何が危険か、どこまでが安全かを子どもが体験を通じて判断できるようになることが『冒険遊び場』の狙いでもあるので、やみくもに禁止せず、絆創膏ですむ程度のけがは良しとしている」と、菅原さん。保護者からは「子どもが以前よりけがをしなくなった」「生き物や植物など、周りのものをよく観察するようになった」という感想もしばしば届くとか。また年長の子どもが年下の子どもを気遣いながらリーダーシップをとるなど、積極性や思いやりの心がはぐくまれる様子も垣間見られると言います。
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(敷地内には手づくりの遊具も多数設置。木製の三角型すべり台は、内側が子どもたちの秘密基地に、冬場はそりのジャンプ台にもなる。)

親子が心を解放し、交流できる場に
現在、利用者の約6割は福島県内に住む親子で、4割は米沢に自主避難した親子。辺見さんいわく、「福島から保養のために訪れ、屋内でぼーっと過ごす親子もいますが、それはそれでいいと思っています。原発事故の影響で生活が激変し、相当なストレスを抱えている方も少なくない。そういう方がここに遊びに来ることで心を解放し、元気になっていただけたらなによりです」。休憩スペースとして開放している築100年の母屋は「おばあちゃんの家のように落ち着ける」と好評。親子が安心して過ごせる居場所となっています。
一方、米沢に自主避難している人の多くは、福島県からの家賃補助金が打ち切られる2017年を目途に帰還するか避難先に移住するかの選択を迫られています。今後の「冒険遊び場」は、「福島に帰還した親子が気軽に遊びに訪れ、米沢への移住を決めた親子と再会・交流できる場としても今以上に大きな役割を担っていくと思う」と、辺見さん。すでに帰還した人から「ここは心の拠りどころ。ぜひ続けてほしい」と後押しされることもあると言います。
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(休憩や食事場所として開放している築100年の古民家の母屋。いるだけで心癒される空間として、利用者に好評を博している。)

子どもを見守るボランティアを養成
長期的な活動を目指し、助成を活用して子どもを見守るボランティア「プレーワーカー」の養成にも力を入れています。2015年内に、野外遊びに関する専門家や心理カウンセラーによる全6回の講座を開催。受講者には学生の他、米沢市に避難中の母親が多く、講座に参加して「冒険遊び場」の意義を深く理解し、周囲の親たちにその良さを伝えてくれる人や、家族ぐるみで「冒険遊び場」のリピーターとなるケースも少なくないとか。
近い将来、約20名がプレーワーカーとして活躍することが見込まれる他、「養成講座の開催をきっかけに『冒険遊び場』の利用者が増えたのも思わぬ効果だった」と、辺見さん。今後は広報活動にも一層力を入れ、「米沢の地元の親子にも『冒険遊び場』を活用してもらいたい」。そして「福島に帰還する子どもも米沢に残る子どもも、人それぞれ価値観が違うことを理解し、互いの立場や考え方を尊重しつつ、自分に自信を持ってたくましく生きてほしい」。そんな願いを胸に、これからも遊び場づくりの活動を続けていきます。

【団体概要】--------------------------------------------------------
設立年:2009年4月(2013年4月に法人化)
代表者名:辺見妙子 スタッフ数:5人
事業内容(本助成事業以外):
・「たけの子自然学校」「農業体験教室」など子どもと親を対象とする
体験型学習や交流活動
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■助成団体の活動意義
同団体は震災以前から野外体験を中心とした保育を行っており、震災をきっかけとして山形県米沢市を拠点として保育を継続して行ってきました。「冒険遊び場あそべんちゃーランド」では、米沢と福島双方の子どもがルールや遊び方に縛られることなく、自分たちのアイディアで発見や創造する喜びを味わえる場として期待されています。

■助成の使途
福島から米沢へのバス送迎の際のバス利用代やガソリン代、「冒険あそび場」のプレーリーダーの人件費の他、計6回のプレーワーカー養成講座の開催費などにも助成が活用されています。また助成金により水回りや給湯の整備など拠点の改修ができたほか、除雪機も購入できました。

■助成前・後での変化
米沢に初めての「冒険あそび場」ができたことで、子ども達に自然の中で思い切りあそび、心を開放できる環境を提供することができました。今後は養成講座によって誕生したプレーワーカーや米沢の人々を巻き込んでの発展が期待されます。
また降雪量が多い米沢での雪かきは労力を要する作業ですが、除雪機の購入によりスムーズな活動場所の確保とスタッフの負担軽減につながっています。