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【福島子ども支援NPO助成】思春期から子育てまで、暮らしを支える地域の助産師

特定非営利活動法人 Commune with 助産師

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支援期間 2015年1月1日~12月31日
事業地域 福島県いわき市
助成金額 460万円
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東日本大震災直後の福島県いわき市では、医療機関の機能が通常に戻るまで時間がかかり、生活環境も整わない中、妊産婦は不安な日々を過ごしました。
「(特活)Commune with 助産師(以下、『こみゅーん』)」は、産前から産後までを通じた地域での包括的なサポート体制が必要だという課題を感じて、医療機関などに勤めていたいわき市の助産師たちが集まり、2006年に設立された団体です。理事長の草野祐香利さんは、クリニックに勤務していたときに「笑顔で退院したはずのお母さんが、数ヵ月後には暗い顔になって一人で育児に悩んでいるのを見て、地域での産後のフォローが十分でないことに気づいたのです」と話します。震災後、妊産婦からの相談対応や沐浴場所の提供などを行う中で、地域での妊産婦へのサポート体制をつくっていく必要性をより強く実感したと言います。
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自分らしい出産に向けた心身のケア
「助産師というと分娩の手伝いをするイメージが大きいかもしれませんが、本来は“リプロダクティブヘルス&ライツ”を支援する役割を担っているんです」と草野さん。リプロダクティブヘルス&ライツとは、性と生殖にかかわる身体と心の健康を保つこと、そしてそれらを主体的に選択していく権利のことです。
例えば、助成を活用した取り組みのひとつに、市内4ヶ所での無料の「妊ぷ健康子育て教室」開催がありますが、自分らしく出産にのぞむための心の準備、骨盤のセルフケアやヨガなどの身体の準備、管理栄養士との調理実習で食事の大切さを知ることなど、助産師の経験と知識を生かした内容になっています。 
「いまのお母さんたちは、インターネットで情報を調べるのですが、情報が多過ぎてかえって悩んでしまう。でも、病院ではゆっくり話せないし、病気以外のもやもやした不安って、医師には聞きにくいですよね。ここでなら、助産師に日ごろ思っている疑問や相談を気軽に話すこともできます」と草野さん。
この教室は、福島第一原発事故によりいわき市内に避難をしている妊婦さんにも受けてほしいと、同市内にある「楢葉町『サポートセンター空の家』」でも開催されました。
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(「妊ぷ健康子育て教室」でのマタニティクッキング講座。妊娠中だけでなく、産後の家族の食育に生かしてほしいと考えている。)

ボランティアが育児の孤立を防ぐ
さらに、こみゅーんでは、「ホームスタート」という活動も行っています。「ホームビジター」と呼ばれる、育児経験があり、研修を受けたボランティアが、6歳未満の子どもがいる利用者の自宅を4回程度訪問し、話に耳を傾け、一緒に育児や家事をするというプログラムです。
「転入してきて知り合いがいないとか、2人目のお子さんが生まれて外出ができないという利用者が多いですね。家でずっと赤ちゃんと過ごしている母親にとっては、育児の大変さを話す相手がいたり、一緒に公園に遊びに行ったりできることで、気持ちを前向きに変えるきっかけになっているようです」。
母子避難中の利用者もいて、「精神的にひどい状態でしたが、話を聴いてもらえただけで嬉しくなり、心が軽くなりました」という声が寄せられています。
「ホームスタート」開始後、これまでの利用者は29人。ボランティアには、約40人もの登録があります。助成によって購入した車両は、こうした自宅訪問などに活躍しています。
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(「こみゅーん」では、妊産婦相談、産後デイケアや入院、親子でのベビーヨガや子育て講座など、さまざまな活動を行っている。)

思春期に伝えたいメッセージ
また、「助産師は、思春期から更年期まで、一生の健康を支える存在」と考えて、市内の小・中・高校を訪問する「いのちの教室」も実施しています。  
震災直後、一時的に10代の人工中絶率が上がったこともあり、「いのちの教室」では、性感染症などの知識だけでなく、「自分がかけがえのない存在であること」、「自分も相手も大事にすること」に重点をおいて話をしているそうです。生徒の感想からは、「生きているのは、命のリレーをしっかりとつないでくれた親のおかげ」など、草野さんたちの思いがしっかりと届いていることが伝わってきます。
こうした学校での取り組みの一方で、「いわき思春期サポーターの会」という別団体との共催で、「思春期ひろば 夢とび」も開催。研修を受けた大学生が“ピアカウンセラー”として、高校生などを対象に、思春期の身体や心について話し合う場を設けています。「ザ・男女交際」「10代ママ・パパからのメッセージ」「それってデートDV?」など、普段は話す機会のない性や人間関係について話すことで、自分の価値観や生き方について考え、多様な性のあり方や人権についても学ぶきっかけになっているのです。
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(ショッピングセンターで行っている「思春期ひろば 夢とび」。ピアカウンセラーの大学生にとっても学びの機会になっている。)

地域の助産師だから出来ること
「助産師の役割には、出産など医療面だけでなく、一生を通じていきいきと健康に暮らしていくための生活面での支援もあります。全国的に助産師の数は減っていますが、地域の身近な存在として助産師だから出来ることがある。いまは隣近所の人間関係も薄くなっていますが、かつては助産師が、地域の人をつなぐ役割も果たしていたのではないでしょうか」と草野さん。
出産が無事にできるだけでなく、安心してお産にのぞみ、安心して子育てができるような地域の体制を、行政や他団体とも協力しながらつくっていきたいと、今後に向けての思いを語ってくれました。

【団体概要】--------------------------------------------------------
設立年:2006年(2009年法人化) 
代表者名:草野 祐香利  
スタッフ数:10人
事業内容(本助成事業以外):
・妊婦健診
・産後訪問や産後デイケア
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■助成団体の活動意義
2006年に11人の助産師が集まり設立された団体で、お産の専門家として、いわき地域で助産院を中心に母子支援活動を行っています。震災後、津波や原発事故の影響によりいわき市における子どもと子育ての課題が深刻化したため、専門性を活かして妊産婦の健康相談や産後ケア、乳幼児家庭訪問支援などに積極的に取り組んできました。その専門性と実績が評価され、助成が決定しました。

■助成の使途
助成を受けて、いわき市内の妊産婦を対象にお産や母乳について学ぶ全5回の連続講座「妊ぷ健康子育て教室」を年間10コース、乳幼児とその親を対象に親子体操と食育を学ぶ「ママ&ベビー体操プラス」を年間9回開講し、それら講座の開催費や教材費などに助成金が充てられました。また、助成を活用して、子育て家庭への訪問などに活用する車両を購入しました。

■助成前・後での変化
助成により、行政の支援の少ない思春期の子どもや妊産婦へのケアが可能となりました。妊産婦や乳幼児親子向けの講座は、双葉郡からいわき市に避難してきた家庭にも開放され、避難先で安心して出産、子育てができる環境を提供することが出来ています。また車両を購入したことで、家庭訪問による子育て支援が充実し、乳幼児を育てる際に親が感じる不安やストレスの緩和にも繋げられています。