トップ > 活動報告 > 【福島子ども支援NPO助成】地域の自然の中で、大人も子どもも夢中になって遊ぶ時間が「生きる力」を育む

【福島子ども支援NPO助成】地域の自然の中で、大人も子どもも夢中になって遊ぶ時間が「生きる力」を育む

特定非営利活動法人ホールアース研究所/ホールアース自然学校 福島校

---------------------------------------------------
支援期間 2015年1月1日~12月31日
事業地域 福島県郡山市
助成金額 373万円
---------------------------------------------------

東日本大震災後、福島第一原発事故の影響で、福島県いわき市でも子どもの外遊びを控える傾向がありました。震災をきっかけとして、「大人も子どもも自然との距離がぐんと離れてしまった」と、ホールアース研究所福島校・校長の和田祐樹さんは感じていました。
「人間は自然と離れては暮らすことができない」。そう考える和田さんは、人と自然との距離をもう一度近づけたいと、いわき市を中心に自然体験活動を開始。現在は、福島県内でも自然豊かで放射線量の低い猪苗代湖畔の郡山市湖南町に拠点を置き、主に福島県内の子どもを対象に、キャンプなど様々なプログラムを実施しています。

復興支援を経て、福島校設立を決意
母体の活動であるホールアース自然学校は、静岡県富士宮市に本校をもち、自然体験や環境教育などの機会を提供している団体です。アウトドア技術や臨機応変な現場力を生かして、阪神淡路大震災以来、被災地支援・復興支援活動も行ってきました。
東日本大震災後も、いわき市で支援活動を開始。緊急支援から始まり、炊き出しや心のケア、子どもの遊び場づくりなどを行いました。本来、数ヶ月の支援活動後には地域の団体へと引き継ぐのですが、今回は被害が広範囲にわたり、継続的なかかわりが必要とされていました。そこで、福島県出身のスタッフだった和田さんが、Uターンして福島校を立ち上げることを決意。「福島で人と人、人と自然の架け橋になりたい」と、2012年に設立準備室をつくり、2013年春にホールアース自然学校福島校を開校しました。
「震災から時間が経ち、子どもたちも外で遊ぶようになりましたが、川や湖で遊んだり、朝日を見たり、そうした原体験になるような経験は足りていないと感じています。こうした経験は、大人になったときに己を支える『生きる力』になるもの。それをこの福島で伝えていきたいのです」と和田さん。
SGR_FSP_3_02_01-ホールアース研究所

自然や地域から教わる貴重な機会
福島校は、湖南町にある築約150年の広い古民家を拠点にしています。改修には費用も時間もかかりましたが、助成を活用して、浴室やトイレなど水回りの改修や排水管の整備を行い、宿泊キャンプの際にも衛生的かつ安全に利用できるようになりました。
古民家では、2015年の夏、2~3泊のキャンプを4回開催。のべ58名の小学生が参加しました。低学年は蔵の中で寝泊りして、地域の人から伝統食を教わり、畑での野菜収穫や川遊び、虫とりなどをして過ごします。高学年になるとテントに寝て、カヌーやトレッキングなど、自分たちで挑戦することも増えていきます。
「地域の人に福島の伝統や昔ながらの技術を教えてもらう貴重な機会にもなっています。畑に初めて行き、自分で収穫したことで嫌いなトマトが食べられるようになった子もいますよ」と和田さん。また、地域の人たちも「町から子どもの声が消えてしまっていたから、にぎやかなのはうれしい」と言ってくれるそうです。 
「みんなで竹を切っていると、近所の人が立ち寄って教えてくれることもあります。子どもたちも『すごい!』と素直に感動しています」。スタッフはもちろん、ボランティアや地域の人など、さまざまな大人と出会えることもキャンプで大切にしている要素なのです。
SGR_FSP_3_02_02-ホールアース研究所
(今回の助成を活用して購入したワンボックス車両。出張キャンプの荷物の運搬や、参加する子どもの送迎などに利用している。)

夢中になる経験が「生きる力」に
和田さんが特に心がけているのは、「子どもが思いっきり夢中になれる時間をもつこと」だと言います。
「みんなが揃って遊ばなくても、脇でずっと虫を見ている子がいてもいい。小さいうちに『それはダメ、これはダメ』と言われると、興味をもっても深めることができません。“外からどういう風に見られるのか”が気になって、本当に好きなことが分からなくなってしまうのです。心ゆくまで何かにのめり込むことは好奇心を育み、主体性の芽を伸ばすと思っています」。
キャンプでは不便なこともありますが、みんなで考えて工夫し、失敗から学ぶことで、行動することの大切さや仲間や親への感謝を学びます。参加後のアンケートでは、親から「子どもが頼もしくなりました」「戻ってきたら家事を手伝ってくれました」などの声が届くそうです。
SGR_FSP_3_02_03-ホールアース研究所
(郡山市内の室内遊び場でも日帰りプログラムを開催。じっくりと虫を観察しているうちに、苦手だった虫に興味がわいてくる。)

自然との距離を近づけていきたい
他にも、福島校では出張キャンプや郡山市内の室内遊び場での日帰りプログラムなどを開催しています。室内遊び場では、親子を対象に、葉っぱをスタンプにしたり、虫の観察をしたりなど、外遊びに興味をもつきっかけになるプログラムを提供しています。
「自然や虫が嫌いという子がいてもいいんですよ。でも、どこまで虫のことを知ったうえで“嫌い”なのかが大事。じっくり観察したりすることで、好きになる子もいる。よく知らないから嫌いなだけかもしれないですよね。それは大人も同じです」と和田さん。
また、年間を通じて「学生アクティブリーダー養成講座」を開催。学生や若い社会人を対象に、自然体験活動を担う次世代の育成にも力を入れています。
今後は、地域の人とのかかわりをさらに増やし、発達障がいのある子ども向けのプログラムなども実施したいと意欲を語る和田さん。「活動を続ける中で、親も子どもも自然との距離が近づいていることを感じる瞬間が、なにより嬉しいですね」と話してくれました。
SGR_FSP_3_02_04-ホールアース研究所
(「学生アクティブリーダー養成講座」の様子。「わくわく」や「子ども目線」など、キャンプにかけるそれぞれの思いを表現した。)

【団体概要】--------------------------------------------------------
設立年:1982年(法人格取得は2002年)
代表者名:山崎 宏  スタッフ数:11名(うち、福島校2名)
事業内容(本助成事業以外):
・田貫湖ふれあい自然塾自然体験ハウス運営等業務(環境省:2008年~)
・教員免許状更新講習:専門講習「自然体験活動の技術と実際」(福島大学:2013年~)
-------------------------------------------------------------------------

■助成団体の活動意義
同団体は静岡県で30年以上にわたり自然体験活動や環境教育、野外教育の実施・啓発を行っている団体です。震災をきっかけに福島校を設立し、自然体験プログラムの実施や福島県内の子ども支援団体とのネットワークづくりを行ってきました。
専門性を有したスタッフによって提供される良質な外遊びや自然体験プログラムは、子どもが自然の中で思いきり遊び、多様な体験を通じて成長する貴重な機会になると評価され、助成が決定しました。

■助成の使途
拠点となる施設の改修や本事業を担当するスタッフの人件費に加え、広報のためのチラシ制作費や自然体験プログラムの材料費に助成が活用されました。
また助成により車両も購入し、移動手段の問題により参加が難しかった子ども達の送迎や遠方での出張型プログラムの実施が可能となりました。

■助成前・後での変化
助成により活動拠点と専任スタッフを確保できたことで、地域住民との関わりを増やし、地域に密着したプログラムの実施や地域ぐるみの子どもの受入ができました。また学生や社会人を対象にした自然教育活動の人材育成プログラムにも注力しており、自然教育に関する技能を備えた人材の増加や、自然教育の持続性への寄与も期待されます。