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【福島子ども支援NPO助成】まちの色といっしょに、心の色も明るく塗り替えたい!

ARTS for HOPE

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支援期間 2014年1月1日~7月31日
事業地域 福島県いわき市、相馬市、南相馬市
助成金額 247万円
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東日本大震災による死者は1万5,000人以上(警察庁調べ)、そして全国にはいまだ18万人以上が避難しています(2015年12月・復興庁調べ)。震災は、それまでの地域の日常を変えてしまいました。
「ARTS for HOPE」(アーツ・フォー・ホープ)は、被災によって心のダメージやストレスを抱えた子どもたちの心を元気にしたいと、震災後すぐに避難所などに通い、アート活動を行ってきた団体です。代表の高橋雅子さんは、15年前から医療・福祉施設などで、アートを通じた参加型活動を行ってきました。
「きれいで明るい色を目にしたり、自由に塗ったり触れたりすることで、心を閉ざしていた人も、気持ちがほぐれて元気になっていくんです。そんなアートの力を実感していたので、何かしたいと思いました」。
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アートだからこそ、できること
高橋さんは被災地に何度も通いながら、カラフルな素材を使った人形づくりや、大きなキャンバスにみんなで絵を描くプロジェクトなどを続けてきました。震災直後に相馬市の避難所を訪れたときには、子どもが無表情で笑わず、思いつめた様子で絵を描くのが心配でしたが、次第に笑顔が戻り、3回目に会ったときは抱きついてくれたと言います。
また、最初は毒ガスや火事など怖い絵ばかりを描いていた男の子は、ある日、きれいな青い丸を描いたそうです。高橋さんが「それは何?」と尋ねると、「青い種。これから樹が生えるんだよ」と答えました。
「私はセラピストではないですが、明らかに描く絵や様子がどんどん変化していくのがわかりました。きれいな色を見ると子どもの目が輝く。そうやって心に作用できるのがアートだと思うんです」そう話す高橋さんは、みんなで一緒に絵を描くなど共同作業をすることで、達成感や前向きな感情をもちやすくなるとも感じています。大人でも、一緒に絵を描くうちに、隠していた本音がポロリと出ることもあります。
「心が元気じゃないときに『どうしたの?』と真正面から聞かれるのは負担が大きいですよね。作業をしながらなら、面と向かわなくていい。なんとなくつぶやいたひと言から隣の人との会話が始まって、言えなかったことを吐き出し、つらいのは自分だけじゃないと励まされることもあります」と高橋さん。

自分たちの手で、まちをきれいに!
そんな「ARTS for HOPE」が、去年から被災地で取り組み始めたのが「アートリノベーションプロジェクト」。老朽化した施設や公園を、子どもや地域の住人の手で明るく塗り替える活動です。福島県内で事務所として借りていた建物を塗り替えたところ、それを見た地元の高校生か「自分たちの地域もきれいにしたい」と相談されたことがきっかけで、被災地でのプロジェクトが広がっていきました。
「大人ががんばって地域を立て直そうとしているのを見ているからか、被災地の子どもたちの意識はすごく高い。自分の手でまちをきれいにしたいという気持ちが伝わってくるんです」。高橋さんは、そんな思いを一緒に実現したいと考えました。
このプロジェクトを担当するスタッフ・小松令奈さんの母校でもあるという、小名浜西小学校(いわき市)のプールも、アートリノベーションで生まれ変わりました。老朽化と地震により亀裂が入ったプールは、カラフルな水玉模様に変身。デザインは、子どもも投票して決めました。作業に参加したのは小学校6年生約90人と地元や東京のボランティアたち。
ある子どもは「暑いなか、みんなで塗ったプールだから、水泳は苦手だけどがんばってみる!」と話しました。「みんなでがんばってやり遂げた」という経験は、子どもの自信にもなっています。
また、東町児童クラブ(南相馬市)では、外壁と内壁を塗り替えました。「階段の手すりを、自由に塗れるスペースにしたところ、みんな夢中になって塗っていました。リーダーとして作業をまとめる子どもがいて、低学年の子どもの面倒をみる姿もありました」。
震災までこの児童クラブに通い、今は他地域に引っ越した男の子もボランティアで参加。「この場所に通っている子、これから通う子たちのために、きれいにしたい」と一生懸命塗っていたそうです。
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(児童クラブの手すりを塗る子どもたち。好きな筆を選んで、好きな色を夢中で塗るその表情は、真剣そのもの。)

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(3日間かけて、たくさんの子どもたちの手によって塗り終えた児童クラブの前で。ここには117名が通っている。)

ポジティブな経験を増やしたい
「参加した子どもはみんな『私がここを塗ったんだよ!』と得意気に話すんですよ。建物が明るい雰囲気になると、地域の人みんなが喜んでくれます」と話す小松さんは、「自分たちで、まちをきれいにした」という思いが、地域への愛着につながっていると感じています。
「子どもの顔つきが明るくなったと感じる一方で、周囲の大人の不安を感じて、震災直後とは違うストレスを抱えている子どもの様子に気づくこともあります。復興は容易にいかないことも多いですが、せめて『この場所は明るくなったね』と、ポジティブに思える経験を一つでも増やしたい。それが力になってくれれば…」そう高橋さんは話します。
復興の歩みに寄り添うように、被災地での活動をこれからも長く続けていきたいと話しました。
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(小児科病棟も、やさしい雰囲気に。「色でこんなに変わるんだ」とびっくりされたそう。入院中の子どもも参加。)

【団体概要】--------------------------------------------------------
設立年:2011年 代表者名:高橋 雅子
スタッフ数:20人
事業内容(本助成事業以外):
・ハッピードールプロジェクト
・ハッピーペインティングプロジェクト
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■助成団体の活動意義
同団体は、震災で心に負担を抱えた子どもを対象に、アートやものづくりを通した心穏やかな時間と空間を届け、心のケアにつなげることを目的として設立されました。前身団体にて長年にわたり取り組んできた、アートの力を活用した心のケアプロジェクトの実績を活かし、アートで被災地の復興をサポートすることを目的として活動しています。被災地の病院や児童クラブ等の施設を、子どもや地域の住人の手で明るく塗り替える「アートリノベーション」活動を通じて、地域の復興に子ども自身が携わる機会をつくり、子どもの感性や創造力を育み、震災とその後の生活ストレス緩和を図る事業として評価され、助成が決まりました。

■助成の使途
福島県内3ヵ所での「アートリノベーション」活動開催費にかかわる必要備品の購入費、参加者募集のチラシ作成費等に助成が活用されました。また、助成により、事業実施にあたるスタッフを継続雇用でき、事業の円滑な運営につなげることができました。

■助成前・後での変化
「アートリノベーション」活動を通じて、子どもたちが受け身ではなく自らの手で環境を明るく変える実体験をし、世代を越えた人々との交流を持つ機会を作ることができました。皆で協力しながらプロジェクトを完成させる中で達成感や自信を持ち、地域や施設への愛着心を育むことができたことは大きな成果といえます。また、この活動を通じて子どもたちのストレスケアも進めることができました。