トップ > 活動報告 > 【福島子ども支援NPO助成】「いつでも安心できる場」で、避難先の親子をサポート

【福島子ども支援NPO助成】「いつでも安心できる場」で、避難先の親子をサポート

特定非営利活動法人 臨床心理オフィスBeサポート

---------------------------------------------------
支援期間 2014年1月1日~12月31日
事業地域 静岡県全域
助成金額 320万円
---------------------------------------------------

東日本大震災から4年半が経った現在も、福島県から静岡県に600人以上の方が避難しています(2015年10月福島県資料による)。静岡県沼津市に拠点を置く「(特活)臨床心理オフィスBeサポート」は、もともと臨床心理士が集まり、地域の「心の問題」に貢献したいと2011年5月に設立された団体です。しかし、活動を始めてまもなく、団体の会員でもあるスクールカウンセラーから、被災地から転校してきた子どもが学校になじめていないようだという話がありました。なかには避難してから数ヶ月経った頃から、心身に不調が表れるようになった子どももいました。そこで「私たちで何かできることはないか」と避難している子どもや親をサポートする活動「OHANA(オハナ)」をスタートさせたのです。
SGR_FSP-02_23_beサポート-01

安心して、思いきり遊べる場を
OHANAでは、助成を活用して、日帰りや一泊旅行などの「交流活動」、無料の「個別相談」、そして学校の長期休みの児童預かり事業「OHANA学校」の3つを活動の柱として行ってきました。
昨年の交流活動では、バスツアーやクリスマス会、箱根一泊旅行などを行い、毎回、親子で30人前後が参加しました。「東北の友だちと遊べて楽しすぎる!」など、子どもの感想からも、OHANAを楽しみにしている様子が伝わってきます。理事長の皆川行寛さんは「安心して思いきり遊ぶことで、被災や避難によるストレスを発散してほしい」と話します。
また、交流イベントは、親にとっても貴重な息抜きの場です。「子どもが遊んでいる間に、ぽつりぽつりと悩みを話してくださるお母さんもいます。臨床心理士だからといって特別なことをするわけではありません。ただ、根気強く寄り添っていくことが私たちの役割だと思っています」と理事の加藤好子さん。
県内では、活動を終了する避難者支援団体も出てきているため、静岡市や浜松市など離れた地域から新しくOHANAに参加される方も増えているそうです。

「OHANA学校」から気づいたこと
学校の春・夏・冬休みの日中に子どもを預かる「OHANA学校」は、2013年から始まりました。当初、特に母子避難の方は、震災の体験から「留守番をしている間に何かあったらどうしよう」という不安が拭えず、子どもを置いて働きに出ることができずにいました。「OHANA学校」ができたことで、安心して仕事に就くことができるようになったのです。
「頼れる人がいない生活の中で、祖父母などの身内に代わる安心できる存在、そんな『OHANA学校』は、私の中で最大の支援だと思っています」。そんな嬉しいコメントも寄せられています。
スタッフも「OHANA学校」を始めて子どもとじっくり関わることで、あらためて気づくことがありました。
「時間が経ち、表面的には何事もなく学校生活を送っているように見えていましたが、実はまだ学校になじめずにいる子どもがいるとわかりました。低学年のうちに避難してきた子どもは、学校生活自体になじむ時間がなかったのかもしれません。また、言葉や文化の違いも原因になっているようです」。そう話す皆川さんは、避難してきた子どもに学習面での遅れが見られることも心配しています。
「環境が大きく変わり、子どもは落ち着いて勉強できる状態ではありませんでした。でも、勉強がわからないと、学校だって楽しくない。それがまたなじめない原因になってしまいますよね」。そこで、「OHANA学校」では、午前の時間を使ってスタッフが一人ひとりに合わせた学習サポートを行っています。子どもの様子、学習状況などは、毎日の連絡ノートを使って家族とも共有しています。
SGR_FSP-02_23_beサポート-02
(2014年6月に行われた日帰り旅行では、アスレチックと伊豆三津シーパラダイスへ。身体を動かして、思いっきり遊ぶ子どもたち。)
SGR_FSP-02_23_beサポート-03
(箱根への一泊懇親旅行には、14世帯40人の親子が参加。参加者同士やスタッフとも、ゆっくりと話ができる機会になっている。)

乗り越えるには、時間が必要
「やっぱりね、時間がかかるんですよ…」と皆川さんはつぶやきます。「4年が過ぎて、一見何事もないように見えたとしても、被災や避難の体験を乗り越えるにはまだ長い時間が必要です」。子どもたちは今も「津波ごっこ」をしていると言います。こうした「再現遊び」は、トラウマ体験をもつ子どもが不安を克服しようとする試みだと考えられているものです。
また、「OHANA学校」では、子どもたちをプールに連れていったこともありました。水を怖がる子どもが多く、小学校でのプールの授業に備えてのことでした。最初は不安がっていた子どもも、信頼しているスタッフがそばにいることで勇気を出し、次第に水に慣れていくことができました。それが自信となって、「また来たい!」と笑顔を見せるまでになったそうです。もちろん、子どもの様子をみて「いまはまだ無理」と判断することもあります。こうしたサポートは時間をかけて信頼関係を築いてきたからこそできることです。
最後に加藤さんはこう話してくれました。「大変なときでも、『OHANAがあるから頑張る』と言ってくれた子どもがいます。震災を乗り越えて次の人生をつくるのは、その本人にしかできないこと。私たちはいつでも子どもや親が安心していられる場であることを大事にしています。活動を通じて日常のサポートをしながら、これからもできるだけ長く、心の変化をそばで見守っていきたいと思っています」。
SGR_FSP-02_23_beサポート-04
(12月に開いたクリスマス会の様子。東北から避難している子ども同士、ゲームをするうちに、すぐに打ち解けて仲良くなった。)

【団体概要】--------------------------------------------------------
 設立年:2011年5月  代表者名:皆川 行寛
スタッフ数:8名
事業内容(本助成事業以外):
・一般の人向けの相談・カウンセリング事業
・心のケアに関する研修会・講演会の開催
-------------------------------------------------------------------------

■助成団体の活動意義
静岡県沼津市に拠点を置く同団体は、臨床心理士やカウンセラー等、心に関わる専門家の立場で避難者支援を実施している団体です。避難中の子どもと保護者へのサポートとして、学校に慣れることが困難な子どもが安心して遊び、過ごせる場を提供してきました。メンタルケアの高い専門性を有していることや、県外避難の問題に心理系の専門家の関わりが引き続き重要であることから、2013年に続き助成が決まりました。

■助成の使途
静岡県に避難している子どもとその保護者の無料相談を企画・運営するスタッフや臨床心理士の人件費、また子どものリフレッシュを目的とした1泊2日の宿泊交流会やバスツアーの交通費などに助成金が活用されました。

■助成前・後での変化
助成により子どもと保護者の無料相談を継続実施することができ、合計35回の相談に応じることが出来ました。また、宿泊交流会やバスツアーなどの交流企画を合計5回実施し、のべ117名の参加者を集め、リフレッシュや情報交換の機会を提供することが出来ました。